労働災害

腱鞘炎と労災【上肢障害の認定基準】

のびのび幸福になる労働相談室室長のnobisukeです。

今回は腱鞘炎と労災という問題について記事にしてみたいと思います。

仕事をしていて腱鞘炎になってしまった。

病院に行ったんだけどこれって労災になるの?

それとも健康保険を使うの?

とお悩みの方はぜひご一読ください。

負傷と疾病

労災には業務による負傷と業務による疾病(病気)の二つに大きく分けられます。

基本的に労災と言えば仕事中に起きた事故により負傷した場合に適用されます。

業務遂行中に、業務が原因となって負った負傷について補償されるものになっています。

負傷については仕事が原因と客観的にわかる場合が多いので、比較的スムーズに労災が適用されることが多いです。

それに対し、疾病はその病気になったの原因が仕事にあるのか、それとも仕事は関係なく体質的なものあるいはプライベートの原因なのかがよくわからないケースが多いです。

今回説明する腱鞘炎もそうですし、最近話題になることが多い過労死(脳・心臓疾患、精神障害)も疾病に分けられます。

疾病には認定の基準がある

秘書
秘書
では、どうやったらその疾病が仕事が原因なのかどうかわかるんですか?
室長
室長
厳密に言うとそれは誰にもわかりません
秘書
秘書
ええー!

本当のところ、その病気が仕事が原因なのかそうじゃないのかは誰にもわかりません。

目に見えないことですしね。

ですので、労災保険制度では疾病の認定基準をもうけています。

対象の方の客観的な事実を認定基準に当てはめて、その基準に合致したばあいは業務が原因の疾病と認定し、労災により補償をすることになっています。

腱鞘炎とは

腱鞘炎とは反復する手の使いすぎにより手の腱の鞘(さや)が炎症をおこす病気ですね。

手首なんかは大量の腱が集まっていますので特に腱鞘炎になりやすい場所です。

対処法としては、痛み止めで痛みをやわらげ、とにかく休ませるか、ひどい場合には腱鞘を切る手術を行う場合もあります。

腱鞘炎は労災のなかでは「上肢障害」というカテゴリーに分けられます。上肢とは手のことですね。

因みに下肢障害というカテゴリーはありません。

厚生労働省のホームページに「上肢障害」の認定基準がのっています。

上肢障害の労災認定の要件

腕や手を過度に使用する機会は、仕事だけでなく家事や育児、スポーツといった日常生活の中にもあります。また、上肢障害と同様の状態は、いわゆる「五十肩」のように加齢によっても生じます。

そのため、労災と認定されるためには、次の3つの要件すべてを満たす必要があります。

  1.  上肢等※に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。※上肢等とは、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手、指をいいます。
  2. 発症前に過重な業務に就労したこと。
  3. 過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること。

「上肢等に負担のかかる作業」とは

①上肢の反復動作の多い作業
◆パソコンなどでキーボード入力をする作業
◆運搬・積み込み・積み卸し、冷凍魚の切断や解体
◆製造業における機器などの組立て・仕上げ作業、調理作業、手作り製パン、製菓作業、ミシン縫製、アイロンがけ、手話通訳

②上肢を上げた状態で行う作業
◆天井など上方を対象とする作業
◆流れ作業による塗装、溶接作業

③頸部、肩の動きが少なく姿勢が拘束される作業
◆顕微鏡やルーペを使った検査作業

④上肢等の特定の部位に負担のかかる
状態で行う作業
◆保育・看護・介護作業

*①~④は類型を示したものであり、これらに類似した作業も「上肢等に負担の
かかる作業」に該当することがあります。

「相当期間従事した」とは

原則として6か月程度以上従事した場合をいいます。

「過重な業務に就労した」とは

発症直前3か月間に、上肢等に負担のかかる作業を次のような状況で行った
場合をいいます。

業務量がほぼ一定している場合

同種の労働者よりも10%以上業務量が多い日が3か月程度続いた
*同種の労働者とは、同様の作業に従事する同性で年齢が同程度の労働者を指します。

業務量にばらつきがあるような場合

①1日の業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度
あり、それが3か月程度続いた(1か月間の業務量の総量が通常と同じでもよい)

②1日の労働時間の3分の1程度の時間に行う業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた(1日の平均では通常と同じでもよい)

なお、過重な業務に就労したか否かを判断するに当たっては、業務量だけ
でなく、次の状況も考慮します。

長時間作業、連続作業 .過度の緊張 .他律的かつ過度な作業ペース
不適切な作業環境 .過大な重量負荷、力の発揮

上肢障害の代表的疾病

上肢障害の代表的な診断名には、次のようなものがあります。

  • 上腕骨外 (内)上顆炎
  • 手関節炎
  • 書痙
  • 肘部管症候群
  • 腱鞘炎
  • 回外 (内)筋症候群
  • 手根管症候群

まとめ

今回は腱鞘炎を代表とする上肢障害の認定についてまとめました。

仕事で手を酷使してしまい、腱鞘炎などの上肢障害になってしまった方は、今回の認定基準に合うかどうかを確認していただき、病院の先生に仕事が原因でなったものかどうか、アドバイスを求められた方がいいと思います。

確認していただいて、認定されそうだなと思ったら労災手続きをとっていただいて、監督署の調査を待ちましょう。

当然認定基準に合うかどうかを確認するために様々なことを確認されますが、調査に協力をしてください。

監督署は客観的な事実を集めて、認定できるかできないかを判断します。

これはケースによってまちまちであり明確な線引きがないので、労災と認定されるかされないかは最終的には監督署の決定を待たなければなりません。

いろいろ手間ですがそれらを確認しないと決定ができませんのでやむを得ませんね。

 

 

労災が発生したときにとりあえず最低限行わなければならない手続きです。

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