コラム

運送業過労死防止対策【ホワイト物流・スクリーニング検査】24時間営業コンビニも同じ問題だった

秘書
秘書
年度末は引っ越し屋さんが足りなくて引っ越し難民が発生するとかニュースで言ってましたよ。
室長
室長
引っ越し業者などの運送業者は、かねてから労働時間が長時間になる傾向があって過酷な労働条件ですので、成り手が不足していて慢性的な労働力不足に陥っています。
秘書
秘書
でも、働き方改革で長時間労働は抑制されるんですよね?
室長
室長
一般的な業務は2019年4月から罰則付きの時間外労働条件規制がされ、年間の時間外労働上限は720時間になりますが、自動車運転業務はその特殊性から当面年間960時間を上限として5年間の猶予期間があるんです。
秘書
秘書
じゃあ、すぐに長時間労働がなくなるわけではないんですね。
室長
室長
それに、いくら法律で罰則を付けて規制を厳しくしても、実際の仕事がそれに追い付かなければ本当の意味でワークライフバランスを確保することなんてできませんよね。
秘書
秘書
どうしたらいいんでしょうねー。
室長
室長
今回は別の視点から国土交通省がトラック運送業の労働環境をよくしようという施策を出していますので、確認してみましょう。

のびのび幸福になる労働相談室室長のnobisukeです。

今回は国土交通省がだした、トラック運送業にかかる労働環境改善策についてみてみたいと思います。

トラック運送業は慢性的な長時間労働と人手不足

トラック運送業はとにかく労働時間や拘束時間が長い仕事で、長距離ドライバーなどは自宅で家族と過ごす時間などほとんどありません。

ワークライフバランスなど夢のまた夢という状況です。

当然に休息による疲労の回復をすることができずに、長時間労働を原因とした脳心臓疾患の発生件数が最も多い業態です。

プライベートなどほぼない仕事であり、過酷な労働環境であることから、人材が不足していることもなおさら労働環境を悪化させており、負の連鎖が続いています。

国土交通省の施策

そこで、トラック事業者の許認可などを管轄している国土交通省がそういった状況に歯止めをかけようと、様々な施策を打ち出しています。

厚生労働省が労働基準法を改正し、働き方を改革しようとしていますが全く別の切り口です。

規制を厳しくするのではなく、運送業者や荷主(顧客)の自発的な労働環境改善を認証してそこに付加価値をつけようというものです。

職場の働きやすさ認証制度

運送業者自体が労働環境を改善していることを示し、求職者が安心して就職できるように促すものです。

労働時間や休日などの規定や実際の働き方の状況、健康や安全確保、人材育成に積極的に取り組んでいる事業者を評価して、一定以上取り組んでいる事業者を国土交通省が認証するというものです。

これには、単純に人材確保の面で効果があるとともに、取引先などの企業への効果も期待されます。
社会的な貢献度も世間にアピールできますね。

厚生労働省が女性の社会進出に貢献している企業を認証している「くるみん」の制度に似ています。

この認証制度により運送業者の自発的な労働環境改善が促されれば業界全体の働き方改革が大幅に進むことになるでしょう。

ホワイト物流運動

運送業に限ったことではなく、日本社会全体の問題として、顧客至上主義があげられます。

顧客を優先するばかりに時間や量的に無理な注文を引き受け、結局その皺寄せは労働者にいく、という構図です。

企業内で労働基準法の規制によって働き方改革を進めようとしても、この構図がなくならない限り必ず企業内のどこかに皺が寄ります。

そして、その矛先は弱者です。

そういったことから、注文主、運送業でいうところの荷主に運送業者の労働環境を考えてもらって、それによった注文をしてくれるような荷主を「ホワイト物流」認証するという制度です。

これも国土交通省が認証していきます。

トラック運送業の長時間労働の原因のひとつとしてあげられているのが、「荷待ち時間」。

荷主のところで、運ぶべき荷物の用意ができるまでの手待ち時間です。

こういった恒常的な待ち時間を荷主の自発的な改善努力によりなくしていこうという運動です。

また、ホワイト物流運動は何も荷主に限ったことではありません。

我々日本国民全体に要求されている問題です。

分かりやすいところでいうと、再配達問題やamazonなどの極端な即配サービスなどです。

これらは全てとても便利なものではあります。

しかし、これらはまさに運送業者が顧客の無理な要求になんとか答えようと無理をして実現しているサービスです。

この影には多数のトラックドライバーの長時間労働があります。

こういった行きすぎたサービスを日本国民全体で抑制していこうというのがホワイト物流運動の最終的な目標なのではないでしょうか。

スクリーニング検査受診

過重労働も相まって、トラックドライバーの心臓疾患発症率が高まっています。

運転中の発症はドライバー自身はもとより交通事故の原因となり、関係のない人を巻き込む可能性もあります。

そこで、これも国土交通省がトラック運送業者向けに心臓疾患のスクリーニング検査受診を促すガイドラインを策定しています。

現在運送業全体での受診率はわずか3%に留まるそうで、さらなる受診を促し、ドライバー自信の健康及び交通事故の発生を未然に防ぐのが目標です。

まとめ

今回は過酷な労働環境に置かれているトラック運送業の労働環境改善策についてまとめました。

先程も触れましたが、運送業は過酷な労働環境であり、女性やミドルシニア層の求職者が集まりにくく慢性的な人材不足に陥っていることでさらに労働環境が悪くなっているという負の連鎖が続いています。

荷主はもとより、日本全体の課題として私達国民の一人一人がホワイト物流運動を展開して、過剰な物流サービスをやめることが、労働条件を改善する一歩です。

また、国土交通省が労働環境改善に力を入れている企業を認証していくということですので、そういった企業を応援していくのもホワイト物流運動に繋がるのではないでしょうか。

また、この問題は運送業に限ったことではなく、IT業界や飲食店、また最近話題になっているコンビニエンスストアの24時間営業問題とも深く関係しています。

日本全体のコンセンサスとして、さまざまな「ホワイト」運動を展開する必要があります。

現在の日本は法律の規制、罰則により無理やり働き方改革を行おうとしています。

しかし、結局インプット、顧客からの仕事の受け方を変えない限り、内部の歪みが酷くなるばかりで抜本的な解決にはならないでしょう。

日本は世界的にも顧客至上主義が行きすぎている国です。

顧客は神様ではなく、サービス提供者は奴隷ではないのです。

欧米諸国のようにより対等な立場でビジネスを展開しなければ労働生産性の向上も望めません。

いまこそ、日本社会全体でサービスのあり方も含めて本当の意味での働き方改革を意識改革を進めていかなければなりません。