労働災害

労災隠しの実態【法違反】労災なのに隠蔽されたときの対策

のびのび幸福になる労働相談室室長のnobisukeです。

仕事をしていてどんなに注意をしていても起こってしまうのが労災事故です。

大きなものから小さなものまで様々な労災事故があります。

労災事故が発生した場合には、会社は労働基準監督署に届け出をしなければなりませんし、被災した労働者の救済のために労災の各種手続きをしなければなりません。

しかし、何故かこれを隠そうとする会社があとをたちません。

労災を隠し、本来するべき報告をしないことは「労災隠し」であり、立派な犯罪です、

労災で負傷したのに、会社(若しくは上司)から隠せと言われた場合どうしたらいいのでしょうか?

まず、労災ってなに?

そんなこといまさら!とお思いかもしれませんが、

労災の手続きをしてください!

と自信をもっていうためには絶対に労災であると確信を持ちたいところ。

労災かどうか再確認するポイントを整理しました。

あなたは労働者ですか?

まず、真っ先に確認したいのは、あなたは労働者ですか?ということです。

働いてるんだから労働者だろうが!

確かにそうなんですが、ここでいう労働者とは労働基準法で保護されている、法律的な労働者かどうか、ということです。

普通に会社に面接に行って(面接じゃなくてもいいですが)私を雇用してください、はい、ではこれこれの賃金や働く日数、これこれの条件であなたを雇います、と約束して雇用されて働いている人は労働者です。

雇用される場合、雇用契約書を取り交わしたり、労働条件通知書または就業規則などによって雇用条件を明示されていることが多いです。

では、どのような人が労働者にならないかというと、一番多いのが

請負契約で働いている人

です。

建設業で多いのですが、運送業などのその他の業態でも、多くみられます。

会社とその人が雇用契約を結んで雇い入れたのではなく、ある仕事の成果のみをお願いしてその見返りに報酬を支払うような場合です。

請負契約による業務請け負いだったばあい、会社とあなたはあくまで対等の立場です。

あなたという個人事業主にたいして、仕事をお願いした、というだけであり、あなたの仕事中の怪我に関してあいての会社は責任を負う立場にはありません。

そしてあなたは個人「事業主」ですので労働基準法で保護されている、「労働者」にはあたらないのです。

今一度、どのような形で契約しているのかを再確認してください。

業務に起因していますか?

業務に起因しているか、といわれてもよくわかりませんが、要は仕事のせいで負傷したと言えますか、ということです。

作業中にノコギリで手を切ってしまった。

高所で作業していて誤って転落して骨折した。

これらのように明らかに業務が原因で負傷したような場合は問題ありませんし、自分の不注意であろうが他人のせいであろうが関係ありません。

というか、労災事故のほとんどは労働者の不注意によるものです。

たまに、

「お前の不注意なんだから労災は使わせない」

などと意味不明なことを言う会社(上司)がいますが、鼻で笑って無視しましょう。

問題となるのは、仕事には関係がなく日常動作でもなる可能性がある怪我、または腰痛や腱鞘炎などの疾病といわれる病気の場合です。

これらは業務との因果関係がわかりづらいので、労災ではない可能性があります。

では、どうしたらいいのか?

管轄の労働基準監督署に労災手続きをする他ありません。

電話などの問い合わせでは明らかに労災にならないものは教えてくれますが、微妙なものは電話ではわかりません。

労働基準監督署は正式に労災請求を受理しないと調査ができないからです。

そして、調査の結果、監督署として決定をするまで正式に答えがでないのです。

労災を隠せと言われた場合

微妙な場合はさておき、あなたが「労働者」であり、仕事中に負傷をしてしまった場合、健康保険は使えません。

まず負傷してしまったことを会社に報告してください。

その際に会社に、もしくは上司に

「労災を隠してくれ、家で転んだことにしてくれ。」

などと言われても無視してください。

治療が必要な状態であればとりあえず病院へ行って下さい。

手続きなどは後で構いませんので、とりあえず病院へ行って、仕事中に負傷したことを伝えてください。

その後、病院へ提出する書類(様式第5号)や休業補償請求書(様式第8号)を監督署に提出し、必要な補償を受けてもらうことになりますが、本来であれば労働保険番号や事業主の証明が必要ですので、会社の担当者と協力して作成してもらうところです。

休業補償請求書には負傷する前のあなたの賃金を記載するところもあります。

しかし、全く会社の協力が得られない場合、所轄の労働基準監督署に相談してください。

請求書はこちらから印刷できます。

また、最悪、事業主の証明がもらえない状態でも労災に請求することはできます。

会社の協力が得られなくても、自分で労災請求することができますのでご安心ください。

労災に入っていないと言われた場合

「ウチの会社は労災入っていないから。」

「ウチの会社は労災に入ってますので安心です。」

とかいうことをたまに聞きますが、どちらも不正解です。

あなたが先ほど申し上げたような「労働者」なのであれば、あなたが雇用された時点で既になにもしなくても労災が適用されます。

労働者災害補償保険は日本政府の強制保険だからです。

労働者災害補償保険法

第三条 この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。

なにもしなくても雇用した時点で加入しているのです。

ただ、労働者を雇用した事業主は10日以内に監督署に手続きをしなければならないと法律に決められています。

これをしなければ一定のペナルティが「事業主」に課せられるだけです。

これは労災保険が労働者を保護するためにできた歴史的な背景もあり、事業主の不作為により労働者に不利益を被らないようにしている法律の趣旨からきています。

ですから、

「ウチの会社は労災に入っていないから、労災は使えないよ」

とか言ってる人がいたら鼻で笑って無視しましょう。

労災隠しになる場合

たまに新聞で●監督署は●●株式会社が労災隠しをしたとして●地方検察庁に書類送検しました。

なんていう報道がされますね。

それではどんなときに労災隠しとして刑事罰がくだるのでしょうか。

労働安全衛生法

第 百条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

労働安全衛生規則

(労働者死傷病報告)
第 九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2  前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

事業主は労災事故が発生し、その負傷により休業見込みが4日以上となった場合は、労働者死傷病報告(様式第23号)を遅滞なく所轄の労働基準監督署に提出しなくてはいけません。

この報告を怠った場合、あるいは虚偽の報告をした場合に安全衛生法違反として検察庁に書類送検されるのです。

逆に言うと休業を伴わない負傷の場合は報告の義務がなく、法律違反を構成しないので会社は刑事罰を受けることはありません。

なお、当然に通勤災害の場合は事業主に責任はありませんので、報告義務はありません。

まとめ

今回は労災事故を隠蔽されてしまいそうなときの対策についてまとめました。

仕事中に怪我をしてしまった場合は、

まずは何はなくとも会社に報告し、

何を言われても病院の診療が必要な場合は、病院へ行って下さい。

病院では労災ですと申告する。

労災請求を手伝ってくれない、事業主の証明をしてくれない場合は労働基準監督署へ相談してください。

とにかく、

あなたが「労働者」であり、

業務に起因して負傷した場合、

何かしらの手続きにより、必ず労災請求することはできます。

悪質な会社に何を言われても決して泣き寝入りしないでください。

よくあるのが、

「全部会社が費用は持つから労災にはしないでくれ」

なんていう言葉に騙され、あとになって捨てられて誰も助けてくれなくなった

というケースです。

相当時間がたってしまって、労災手続きもできなくなった、なんていう最悪な事態を避けるためにも初めから正しく手続きをしましょう。

そして、残念ですが労災を隠蔽するような会社は明らかにブラック企業です。

そんな会社には早めに見切りを付け、のびのび働ける環境を見つけることをおすすめします。

 

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