のびのび幸福になる労働相談室室長のnobisukeです。
労働基準監督署や労働局等の行政サービスによって様々な個別的労使紛争の解決方法が用意されていますが、それでもなお紛争が解決しない場合は、裁判所による紛争解決方法によるしかありません。
通常思いつくのは民事訴訟(通常訴訟)ですが、費用も時間も大変かかります。
最終的には通常訴訟手続きを取るしかないのですが、その他にも比較的費用と時間が少なくてすむ労働審判、少額訴訟、支払督促手続きについても紹介します。
労働審判
労働審判とは、裁判所による手続きの一種で、裁判官と労働審判員による調停の方法で紛争の解決にあたります。
原則的に話し合いによる調停を目指しますが、最終的に合意に達することができずに問題が解決しない場合にも、両方の言い分から一定の審判をくだします。
審判には一定法的な拘束力がありますが、不服申し立てをすることができ、そうなれば通常の民事訴訟手続きに移行することになります。
手続きは地方裁判所に申し立て書を提出することにより始まります。
原則非公開です。
代理人を立てることもできますが、弁護士のみに限られます。
労働審判のメリット
労働審判制度は平成18年にできた制度ですが、それまでは訴訟による解決方法しかありませんでした。
訴訟は費用もかかりますし、解決するまでに長い時間もかかってしまいますので、一般労働者にはハードルが高く、結局泣き寝入りをしなければいけない状況でした。
その点労働審判は申し立て手数料は民事訴訟の半額で、期日も3~4ヶ月という比較的短い時間で決着します。
労働審判に向かないこと
労働審判制度は3回以内の期日によりスピーディーに紛争を解決する制度ですので、長時間労働を原因とする過労死や過労自殺の損害賠償請求などの複雑な事案については解決する可能性は低いです。
そういった複雑な紛争については通常の民事訴訟手続きによることとなります。
通常訴訟
通常訴訟とは、一般的に裁判という手続きで呼ばれているものでありますが、最も費用と時間がかかる手続きです。
多大な費用と時間をかけて争うことになりますので、比較的複雑な紛争、重大な紛争の解決には向いているといえます。
原告、被告ともに判決内容に不服があれば控訴し、さらなる訴訟手続きを取ることもできますので、どうしても問題解決まで長期化する傾向にあります。
通常訴訟の手続きについては、弁護士を代理人にたてる場合がほとんどですが、訴状を地方裁判所へ提出することにより手続きが始まります。
まずは口頭弁論期日にお互いの主張を行い、証拠資料を提出して裁判官が証拠調べを行います。
十分な申し立て、証拠調べが終了したら口頭弁論は終結し、判決が下されます。
原告被告お互いに条件面で歩み寄ることができ、今後の費用や時間などのコスト等を考慮して、早期に訴状を解決するために、口頭弁論期日に和解して争いを終了させることもできます。
少額訴訟
通常訴訟のほかに簡便な手続きとして少額訴訟という手続きもあります。
少額訴訟は、相手に60万円以内の金銭債権請求をする事件に限られます。
簡易裁判所で手続きを行いますが、訴状の定型用紙が備え付けられているのでそれに申し立て内容を記載し、訴えることになります。
少額訴訟は、1回の期日で決着するので非常にスピーディな解決が望まれます。
しかし逆に言うと、申し立てをする機会が1回しかないので十分な用意をせずに訴訟にのぞむと敗訴してしまう可能性が高くなります。
基本的に通常訴訟のような控訴という手続きはありません。
判決結果に異議を申し立てると、通常の民事訴訟手続きに移行することになります。
少額訴訟は同一の簡易裁判所に年に10回までしか申し立てることができません。
それ以上手続きを取ってしまうと罰金が科せられてしまいますので注意が必要です。
少額訴訟は手続きが比較的楽で時間もかかりませんので、60万円以内の賃金不払いを請求する場合などは有効な手続きといえます。
支払督促
そして最後にご紹介するのは、支払督促という手続きです。
支払督促は金銭債権の回収に非常に便利な制度ですので、賃金不払いの場合などに非常に有効な手段といえます。
これは、少額訴訟以上に迅速、簡単な民事的法律手続きです。
まず、手続きする場所は、相手方(会社)住所を管轄する簡易裁判所です。
該当の簡易裁判所の裁判所書記官へ申立書を提出することにより支払督促手続きは開始されます。
裁判所書記官は督促相手方の事情を聞いたり、事件の証拠調べなどは一切しないで支払督促を発令します。
裁判所書記官から督促相手へ督促状が送達されてから2週間が経過しても督促相手から意義申し立てがない場合、追ってこちらから仮執行宣言の申し立てをすることにより支払督促が確定します。
支払督促の確定は、訴訟の確定判決と同等の効力があります。
督促相手方より意義申し立てがあれば、通常の民事訴訟手続きへ移行して争うことになります。
支払督促の費用は訴訟の半分ですし、手続きも簡単、時間もかからず結果が出ますので、金銭の支払いを求める際には一番有効な手続きと考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、労働基準監督署などの行政サービスで解決することができなかった個別的労使紛争について裁判所による解決方法である、労働審判、通常訴訟、少額訴訟、支払督促についてご紹介しました。
賃金不払いなどの金銭債権の請求 → 支払督促か少額訴訟が有効
その他の解雇問題や労働条件問題等についての争い → 労働審判が有効
それでも解決しない場合や長時間労働を原因とする過労死や過労自殺の損害賠償請求などの複雑な事案 → 通常訴訟が有効
という形で切り分けていただいて、どの手続きが一番手間がかからずに有効であるかを踏まえてお手続きをとっていただけたらと思います。
一刻も早く紛争が解決できて、次のステージでのびのび仕事ができるような環境を整えられるといいですね。
過去の紛争の解決も大事ですが、未来に向けてあなたの能力を十分に発揮できる舞台を用意することも重要なことと思いますので、一定紛争解決のめどがついたら未来にも目を向けてみてはいかがでしょうか。