労働問題

総合労働相談コーナーってご存知ですか?【助言・指導・あっせん】

秘書
秘書
賃金の不払いや解雇予告手当の不払い、労災隠しなどの労働法令に明確に違反しているようなことじゃないと労働基準監督署に相談できないんですか?

 

室長
室長
原則的には労働基準監督署は労働法令に関係すること以外のいわゆる「民事的な事」には立ち入ることはできないんです。

 

秘書
秘書
そうなんですか。

 

室長
室長
総合労働相談コーナーってご存知ですか?

 

秘書
秘書
いえ、知りませんが、どんなコーナーなんですか?

 

室長
室長
労働基準監督署内に設置された相談コーナーなのですが、労働法令に明確に違反していないような労使間のもめ事の相談に乗ってくれる窓口です。

 

秘書
秘書
なんだ。労働基準監督署に相談できるんじゃないですか。

 

室長
室長
厳密に言うと労働基準監督署の相談窓口ではないんですよ。

 

秘書
秘書
???????

 

のびのび幸福になる労働相談室室長のnobisukeです。

今回は労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーについてご説明します。

世の中で起きている労働者と会社との間のもめ事(個別的労使紛争)には労働基準法に違反することばかりではありません。

ちなみに、労働者個人と会社とのもめ事を「個別的労使紛争」というのに対して、会社と労働組合との間のもめ事等を「集団的労使紛争」といいます。

総合労働相談コーナーでは、労働基準法違反にならないような、労働者・使用者で起きている「個別的労使紛争」を解決する窓口として労働基準監督署内に設置されています。

厳密に言うと、労働基準監督署の上部組織に当たる都道府県ごとにある「労働局」の組織の一部です。

「個別的労使紛争」を解決する「助言・指導、あっせん制度」

紛争を解決するためには、まずは双方の当事者で話し合い、円満に解決するのが第一です。

しかし残念ながら、当事者間の話し合い等で円満に解決しないような労使間の紛争については労働基準監督署に相談するしかありません。

監督署の担当者が判断し、労働基準法、安全衛生法、労災保険法等の労働基準監督署が所管する法律違反の問題であれば、監督署がそのまま解決にあたります。

それ以外の個別的労使紛争については、総合労働相談コーナーを通じて「労働局」が紛争の自主的な解決を促進するために当事者に対して「助言、指導」、「紛争解決のあっせん」を行っています。

  • 「助言、指導制度」については相談者からの相談に関して、労働局の担当者から会社へ助言指導を行い、紛争を解決する方法です。
  • 「あっせん制度」は相談者からのあっせん申請により労働局に設置される「紛争調整委員会」が当事者間の言い分を聞いて和解するためのあっせんをうながします。

「助言、指導制度」は比較的簡単な手続きで、問題の解決を目指すのに対して、「あっせん制度」は解雇は納得できないが損害賠償や慰謝料として補償金を求める等の場合に利用され、あっせん案に当事者が合意すれば民法上の和解契約と同じ効果があります。

対象となる紛争
  • 解雇、配置転換、出向、雇い止め、その他労働条件の不利益変更等
  • いじめ、パワハラ、セクハラ等の職場環境等
  • 内定取り消し等の募集、採用に関する問題等
  • 仕事中に自分の不注意で会社に損害を与えてしまい、会社から損害賠償を請求されているような金銭的問題等

これらの紛争に対して、過去の民事裁判の判例等をもとに、民事訴訟になった際の妥当な解決点について案内し、実際の民事訴訟の手続きを経ることなく和解を促すものです。

メリット

この制度のいいところは手続きが簡単で全部無料というところです。

また、非公開でプライバシーも守られます。

この制度ができる前は、こういった「個別的労使紛争」を解決するためには裁判所が行っている民事的な訴訟手続きしかありませんでした。

訴訟となると、弁護士費用も掛かりますし、多大な費用も時間もかかるため、立場や経済力の弱い労働者は泣き寝入りをするしかありませんでした。

そういった「個別的労使紛争」を訴訟手続きによることなく解決しようとして設置されている行政サービスが総合労働相談コーナーです。

デメリット

これらの行政サービス制度の決定的な欠点は、法的な強制力がないということです。

労働局の「助言、指導制度」により民事訴訟になった際の妥当な解決点について案内して、問題の解決を促しますが、無視されればそれまでです。

同様に「紛争調整委員会」のあっせん案に双方の当事者が合意することがなければ紛争は解決しないままです。

そうなってしまうと裁判所が担当している民事的な訴訟手続きに頼らざるを得ません。

まとめ

解雇通知をされたが、不当であるので解雇の撤回を申し出たが断られた。

有給休暇の取得を申し出たが、認めてもらえなかった

仕事中に交通事故を起こし、車の修理代などを賠償しろと言われたが払えない。

解雇されたことは納得できないが、解雇の撤回ができないのであれば精神的苦痛等の慰謝料などの補償金を請求したい

こういった紛争に対して、労働局の「助言・指導・あっせん」を利用することができます。

紛争の最終的な解決方法は通常裁判ですが、多大な時間や費用がかかるため普通の労働者としてはハードルが高すぎます。

こういった場合に、裁判のような強制力はないものの、弁護士の意見、過去の判例などから民事裁判になった場合に予想される結果を導き出し、双方に合意をうながす「助言・指導・あっせん」制度はとても有効です。

手続きについてもあっせん申請書を作成するだけで簡単です。

あっせん委員が労働者と使用者の双方の意見を聞いて円満に解決するような合意を目指します。

でも、こういった紛争が起こらずにのびのび仕事ができる環境が一番なんですけどね。

紛争の解決も大事ですが、その後のご自身の明るい未来についても並行して考えていけるといいですよね。