労働問題

割増賃金、残業代について再確認するための具体的な計算方法まとめ【60時間を越えたらさらに割増】

秘書
秘書
室長、ちょっとどうしてもこの資料だけ今日中に仕上げなければいけないんですが。
室長
室長
そうですか。あんまり残業はしてほしくないんですが、やむを得ませんね。
秘書
秘書
すぐ終わりますし、サービス残業でいいんで。
室長
室長
だめです!

のびのび幸福になる労働相談室室長のnobisukeです。

みなさんはご自身の所定の労働時間と法定労働時間をご存知ですか?

法律上、会社は決まった時間内でしか働かせてはいけないことになっています。

例外的に労使で協定を結べば法定の時間以上に働いてもらうこともできます。

そして、法定の時間以上働いた部分に対しては賃金を割り増さなければならないことになっています。

現在ご自身がどのくらい働いていてどのくらいの割り増し賃金をもらう権利があるのか再確認してみましょう。

万が一、本来受け取るはずの割増賃金がもらえていないという場合はちょっと注意が必要です。

法定の労働時間と休日

労働基準法
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

法定労働時間は

「一日8時間」

「一週間40時間」です。

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
○2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

法定の休日は

「一週間に一日」

「四週間で四日」です。

この他、労使の協定により変形労働時間制を導入している会社もありますので、ご自身の会社の就業規則又は雇い入れ時にもらった労働条件通知書をご確認ください。

休日などについて「当社カレンダーによる」など記載がある場合は変形労働時間制を導入している可能性があります。

繁忙期にあわせて労働時間を変形しているので一時的にも上記の時間を超えている場合がありますが、法定外労働には該当しません。

割増賃金の計算方法

まずは、割増賃金の計算をするためにご自身の単位時間当たりの賃金(時給)を算出してみましょう。

時給相当額の算出

月給制のかた

(月給基本給+手当)/年間所定労働時間の月平均時間

※手当てには家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当て、住宅手当、臨時に払われた賃金、賞与の7種類は含めなくてもよい

具体的には以下のとおりです。

年間所定労働時間の月平均時間は、例えば1日7時間労働の方の年間出勤日が240日の場合

(7時間×240日)/12ヶ月=140時間となります。

基本給20万円、職務手当8万円のかたであれば、

(200,000+80,000)/140=2,000円が時給相当額になります。

日給制のかた

(日給基本給+手当)/一週間所定労働時間の一日平均時間

具体的には以下のとおりです。

一週間所定労働時間の一日平均時間は、例えば1日8時間労働の方が週に5日出勤の場合

(8時間×5日)/5日=8時間となります。

日給8,000円のかたであれば、

(8,000+0)/8=1,000円が時給相当額になります。

なお、時給制の方や出来高給の方も同様の計算方法です。

割増率

法定の労働時間を超えた状況によって割増率は決められています。

労働基準法
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○2 省略
○3 省略
○4 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○5 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

具体的には

法定労働時間を越えたときには時給相当額に1.25をかけます。

午後10時から午前5時の間は時給相当額に1.25をかけます。

法定労働時間を超えて、かつ、午後10時から午前5時に働いたときは時給相当額に1.5(1.25+0.25)をかけます。

法定休日に働いたときは時給相当額に1.35をかけます。

法定休日の午後10時から午前5時に働いたときは時給相当額に1.6(1.35+0.25)をかけます。

ここでひとつ注意していただきたいのは、土日週休2日の会社にお勤めのような場合、土曜日に出勤すると法定休日労働と思いがちですが実は違います。

法定休日はあくまでも一週間に一日ですので、土曜日に出勤しても法定休日労働にはなりません。

ただ、月曜日から金曜日まで40時間働いていたような場合は、当然法定時間外労働となりますから、2割5分の割増賃金を支払わなくてはなりません。

月に60時間以上法定時間外労働をした場合は割増率が上がる

通常の割増賃金率についてはすでに述べました。

しかし、法定時間外労働が月に60時間を超えてしまったような場合は割増率が5割に上昇します。

時給相当額に1.5をかけます。

さらにそれが午後10時から午前5時だった場合は1.75です。

ただし、現在はこのルールは大企業にだけ適用されていて、中小企業は適用されていません。

しかし、今年度国会で「働き方改革関連法案」が可決成立したためこの猶予がなくなり、2023年4月からはすべての企業で適用されることになりました。

※中小企業とは資本金5千万円以下又は常時使用労働者数が50人未満のような企業です(業種により基準が異なります)

まとめ

実際にご自身が法定時間外労働をした場合の割増賃金が計算できましたでしょうか。

今回ご紹介した計算方法により計算をされてみて、働いた分の割増賃金が支払われていないという場合は一度労働基準監督署にご相談されてみたほうがいいと思います。

場合によっては変形労働時間制を採用している可能性もありますからね。

実際の法定外時間外労働、休日労働分の割増賃金を期日を決めて会社に請求して支払われない場合は、その法違反の事実を労働基準監督署に申告して是正指導をしてもらいましょう。